2006
12.10

従来の「チャクポチャ」での狙い方ではない、狙って獲る七里が瀬のクロマグロ!

Angler:平松 慶

2005年は九州対馬海流に当たる七里ヶ曽根にクロマグロを追って通った。
4月、遊漁船として海に出る前、本業がマグロ漁で生計を立てていた、春漁丸、春田直実船長からマグロの気配の話を聞いていた。どうしても口を使わない七里のヨコワを狙ってもらいたい、と。
ジギングゲームにおける、チャンスはもちろん、それまでも何度と経験をしてきた。クロマグロだけではなく、キハダやメバチといったマグロも40キロ超はキャッチしてきたのだが・・・。

tideLez.
目の前に起こる水柱は、七里ヶ曽根でヒラマサを狙っている時に目にした。ジギングからのアプローチに、ただどうすることも出来なかった、まるで指を咥えて見ているだけのあの時を。この状況を見せられ、春田船長からキャスティングでのアプローチを必要とされ、私なりの考えのもと、翌日もう一度七里へと入ったのであった。
キャスティングでのタックルセレクトはトレバリーロッドを代用する者もいたのであったが、私は近海でメジマグロや大型シイラなどを狙う為に開発したタイドレジュの67H、72Mを用意していった。
メインラインはPE4号、5号。リーダーはナイロンの100lb。そしてルアーは小口径のスプラッシュをメインにアクションをつけられるものと、前方向に水平フォールをしていく11
cmのノーリップのインジェクションプラグを。

マグロ狙いで七里ヶ曽根に入った時、漁師さんの船は一列に並んで仕掛けを落としていた。その船団を避けるように春漁丸は曽根の外側をゆっくりと流し始めた。
水鳥の方向を見ては、船首を向け、私は水柱が立つのを待つのかと思ったのであったが、そうではなく、潮目を見つけてそこでエンジンを切ったのであった。

水鳥は上空で回っている。目に見えるのは潮目であり、そこがスタートである。決してナブラを追うことは無い。小口径のペンシルポッパーは17cm。これをキャストする。フローティングタイプの「トランペット170」という名のルアーを左右に首振りと強弱のストップ&ゴーを繰り返してやった。ルアーアクションはトレバリーゲームの時と同じようにどちらかというとスローでの小刻みなドッグウォークの様なアクション。
ロッドティップでトゥイッチを入れるように操作してやる。潮目が少しザワザワとヨレている所へルアーを通してやると、ものすごい水飛沫が上がった。紛れもないトップウォーターでのマグロゲーム。
その一発で、全身が緊張し、興奮する。これがトップウォーターゲームの面白さであるが、またマグロは他に負けず、出方が派手。

中層に回遊するマグロをベイトであるトビウオに見せかけ、表層でアプローチさせてやったのだ。スプラッシュであったり、小刻みな軽いポップ音が中層のマグロを水面へと持ち上げた。
30キロを超す、そのマグロのバイトはそれはそれは派手であり、ダイレクトに目を刺激してくれる。右脳も左脳も大量の酸素を要求し、体中がアドレナリンを分泌する。
体力勝負というよりも興奮の連続。「静から動」へとその一瞬で大きく変り、掛けたものへの期待が全員に注がれる。船べり近くまで上げてきてもグルグルとあと少しという所でマグロは弱音を吐かず頑張り通す。

Tidelez.焦る我々はただ自分自身で信じるのみ。ロッドを信じ、リールを信じ、ラインを信じ、リングを信じ、フックを信じ、ノットを信じ、すべてのバランスを信じて。
ギャフを口元にしっかり打ち込まれた時に体中から大粒の汗が大量にあふれ出たのであった。我々アングラーの勝ち、であった。
このキャスティングでもベイトに沸く「チャクポチャ」での狙い方でないスタイルはあっという間に日本中に広まっていった。

私のやったこのマグロの中層から水面へ出してやる狙い方は、そして30キロ、40キロ・・・ついに60キロクラスの(実測59・8キロ華栞丸、アングラー緒方義久氏)トロフィーまで手にする事が出来たのであった。
ルアーはトランペットを始めとする、リアルタイプのインジェクションプラグも含む。水面直下を意識したものばかり。
この釣法が伝説となり、今年、また黒潮海域でのゲームに没頭したい。スローで狙う新しいマグロゲーム。ナブラをただひたすら追い、突っ込んでいくスタイルではなく、海況の雰囲気と、鳥と船長の六感を信じ、ルアーのアクションで水面で口を使わせる。自分自身と魚との頭脳勝負。マグロ狙いのトップウォーターでの魅力はこのスタイルでしか味わえない。狙って獲っていく、今年も。黒潮伝説「タイドレジュ」と共に。

by 平松慶